私の現在の担当領域であるPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)システムとは何か?Webや書籍にいろいろと書いてありますが、平たくいえば、製品開発業務の効率化を支援するシステムのことです。
製品開発業務を効率化するシステムのことをなぜPLMシステムと呼んでいるのか、製品ライフサイクルとは何か、初めて知った時には腑に落ちなかったので、ここではPLMシステムが指しているP、L、Mについてそれぞれ簡単にまとめてみました。PLMを理解する最初の一歩目になれば幸いです。
P:プロダクト
これは単純に、プロダクト、製品という意味です。PLMが扱う領域は多岐にわたっており、航空、自動車、ロボットなどの組み立て方の産業はもちろん、半導体、化学、食品、石油、ガス、アパレルなんかも含まれます。世の中にあるあらゆる製品開発業務がPLMシステムによって効率化できる、と考えてよいでしょう。関わる人の多い大規模な製品開発業務ほど、システム導入の効果が大きなものになります。
L:ライフサイクル
元々は発達心理学で使われていた用語で、人間が生まれて死ぬまでの過程をライフサイクルと呼んでいます。「世代交代する過程」というニュアンスですね。人間が生まれて死ぬというサイクルによって社会が成り立っているため、社会をより豊かにするためにライフサイクルの各段階(幼年期、青年期、老年期など)で発生する課題を抽出する研究が進みました。また、解決のためのルールが国によって定められ、運用されています。
同じ考え方を製品開発に応用したものが製品ライフサイクル(product lifecycle)です。製品は企画、設計、生産され、やがて生産終了となります。つまり製品ライフサイクルとは、製品が生まれて(企画、設計)から死ぬ(生産終了)までの過程のことです。人間のライフサイクルと同様、会社をより豊かにするために製品ライフサイクルに対してルールを定める必要があります。
※以下は補足ですが、製品のライフサイクルの意味するところは2種類あります。ひとつは企画部門の見方、もうひとつは設計開発部門の見方です。PLMシステムの機能群は設計開発の効率化を中心に設計されているので、ここで言うライフサイクルはあくまで設計開発部門の見方のことを言っていると考えてよいです。(厳密に言えば企画部門の視点も含めたPLMシステムも存在しますが、最初のうちは混乱するので考えない方がわかりやすい。)
◆企画部門の視点での製品ライフサイクル(マクロの製品ライフサイクル)
導入期:製品が認知されていない、新しいもの好きな人に買ってもらう段階。ライバルが少ない。
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成長期:製品の認知が始まり、需要とライバルが急激に増える。
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成熟期:需要は頭打ちになるがライバルはさらに増え、価格競争、コモディティー化が進む。
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衰退期:需要が減少し、ライバルが市場から撤退していく。
◆設計開発部門の視点での製品ライフサイクル(ミクロの製品ライフサイクル)
設計企画:営業と一緒に製品の構想を練る。
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開発:企画の要件を満たすよう、技術的な仕様を決める。
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試作:設計図から試作を起こし、他の開発者と連携しながらさらに仕様を詰めていく。
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テスト:製品の品質をテストによりチェックする。
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量産開始:最終的な設計図に基づき工場で生産され、市場に出荷される。
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生産終了:ニーズの変化に応じて製品の生産が終了する。
M:マネジメント
ここでのマネジメントとは「定められたルールに従い運用すること」くらいの意味で考えればよいです。
まず人間のライフサイクルを考えてみましょう。日本人のライフサイクルがは国によってマネジメントされています。例えばこんな感じです。
・14歳未満の人が犯罪を犯しても刑務所には入らない
・16歳未満の人がパスポートを発行したい場合は親の同意が必要
・18歳未満の人はエロい本が買えない
・20歳以上の人には選挙権が与えられる
・60歳以上の人には年金が支給される
あくまで例なので厳密な話は置いときますが、ライフサイクル内にルールを定めることで日本社会の継続、発展に繋げようとしているわけですね。製造業でも同じように、ライフサイクル内のルールに従った運用によって会社の継続、発展を目指しています。どんなルールを定めるかは会社によって異なりますが、例えば以下のようなものがあります。
・書き途中の設計図は設計開発部門以外の人が見ることはできない
・設計が完了した設計 図は生産部門で見ることができる
・生産中の設計図は誰も編集することができない
このような業務ルールは不変ではなく、開発のスピードを上げたい、品質を高めたい、コストを削減したい、などの要望に合わせて変更されます。最近、日本のものづくりが以前ほどの勢いがないことを嘆き、巷では業務の抜本的な改革みたいなものが求められているものの、そんなに抜本的にルールを変えたら設計者が混乱し、設計効率が落ちるので難しいところです。
以上、PLMのP、L、Mに関する基本情報でした。このあたりのことを頭に入れてPLMの書籍を読んでいくと、納得感が高まるのではないでしょうか。
もっとしっかりPLMについて知りたい人は、以下の書籍で網羅的に書いてありオススメです。
参考図書: