ものづくりの発想とシステム

製造業向けの業務システム開発に携わる20代若手SEのブログです。 製造業関係の新人SEやSEに興味のある学生向け。

2015年01月

私の現在の担当領域であるPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)システムとは何か?Webや書籍にいろいろと書いてありますが、平たくいえば、製品開発業務の効率化を支援するシステムのことです。

製品開発業務を効率化するシステムのことをなぜPLMシステムと呼んでいるのか、製品ライフサイクルとは何か、初めて知った時には腑に落ちなかったので、ここではPLMシステムが指しているP、L、Mについてそれぞれ簡単にまとめてみました。PLMを理解する最初の一歩目になれば幸いです。



P:プロダクト

これは単純に、プロダクト、製品という意味です。PLMが扱う領域は多岐にわたっており、航空、自動車、ロボットなどの組み立て方の産業はもちろん、半導体、化学、食品、石油、ガス、アパレルなんかも含まれます。世の中にあるあらゆる製品開発業務がPLMシステムによって効率化できる、と考えてよいでしょう。関わる人の多い大規模な製品開発業務ほど、システム導入の効果が大きなものになります。



L:ライフサイクル

元々は発達心理学で使われていた用語で、人間が生まれて死ぬまでの過程をライフサイクルと呼んでいます。「世代交代する過程」というニュアンスですね。人間が生まれて死ぬというサイクルによって社会が成り立っているため、社会をより豊かにするためにライフサイクルの各段階(幼年期、青年期、老年期など)で発生する課題を抽出する研究が進みました。また、解決のためのルールが国によって定められ、運用されています。

同じ考え方を製品開発に応用したものが製品ライフサイクル(product lifecycle)です。製品は企画、設計、生産され、やがて生産終了となります。つまり製品ライフサイクルとは、製品が生まれて(企画、設計)から死ぬ(生産終了)までの過程のことです。人間のライフサイクルと同様、会社をより豊かにするために製品ライフサイクルに対してルールを定める必要があります。


※以下は補足ですが、製品のライフサイクルの意味するところは2種類あります。ひとつは企画部門の見方、もうひとつは設計開発部門の見方です。PLMシステムの機能群は設計開発の効率化を中心に設計されているので、ここで言うライフサイクルはあくまで設計開発部門の見方のことを言っていると考えてよいです。(厳密に言えば企画部門の視点も含めたPLMシステムも存在しますが、最初のうちは混乱するので考えない方がわかりやすい。)


◆企画部門の視点での製品ライフサイクル(マクロの製品ライフサイクル)

導入期:製品が認知されていない、新しいもの好きな人に買ってもらう段階。ライバルが少ない。

成長期:製品の認知が始まり、需要とライバルが急激に増える。

成熟期:需要は頭打ちになるがライバルはさらに増え、価格競争、コモディティー化が進む。

衰退期:需要が減少し、ライバルが市場から撤退していく。


◆設計開発部門の視点での製品ライフサイクル(ミクロの製品ライフサイクル)

設計企画:営業と一緒に製品の構想を練る。

開発:企画の要件を満たすよう、技術的な仕様を決める。

試作:設計図から試作を起こし、他の開発者と連携しながらさらに仕様を詰めていく。

テスト:製品の品質をテストによりチェックする。

量産開始:最終的な設計図に基づき工場で生産され、市場に出荷される。

生産終了:ニーズの変化に応じて製品の生産が終了する。



M:マネジメント

ここでのマネジメントとは「定められたルールに従い運用すること」くらいの意味で考えればよいです。

まず人間のライフサイクルを考えてみましょう。日本人のライフサイクルがは国によってマネジメントされています。例えばこんな感じです。


・14歳未満の人が犯罪を犯しても刑務所には入らない

・16歳未満の人がパスポートを発行したい場合は親の同意が必要

・18歳未満の人はエロい本が買えない

・20歳以上の人には選挙権が与えられる

・60歳以上の人には年金が支給される


あくまで例なので厳密な話は置いときますが、ライフサイクル内にルールを定めることで日本社会の継続、発展に繋げようとしているわけですね。製造業でも同じように、ライフサイクル内のルールに従った運用によって会社の継続、発展を目指しています。どんなルールを定めるかは会社によって異なりますが、例えば以下のようなものがあります。


・書き途中の設計図は設計開発部門以外の人が見ることはできない

・設計が完了した設計 図は生産部門で見ることができる

・生産中の設計図は誰も編集することができない


このような業務ルールは不変ではなく、開発のスピードを上げたい、品質を高めたい、コストを削減したい、などの要望に合わせて変更されます。最近、日本のものづくりが以前ほどの勢いがないことを嘆き、巷では業務の抜本的な改革みたいなものが求められているものの、そんなに抜本的にルールを変えたら設計者が混乱し、設計効率が落ちるので難しいところです。



以上、PLMのP、L、Mに関する基本情報でした。このあたりのことを頭に入れてPLMの書籍を読んでいくと、納得感が高まるのではないでしょうか。

もっとしっかりPLMについて知りたい人は、以下の書籍で網羅的に書いてありオススメです。


参考図書:







正月に実家に帰ると家族とか親戚、友人に、


 「今どんな仕事をしてるの?」


みたいなこと聞かれますよね。 私の仕事を一言で表すと、「ITによる製造業の製品開発プロセス支援」ということなんですが、これを言ってもなかなか伝わらない。

まず過去のデータを見てみましょう。


○「ITによる製造業の製品開発プロセス支援をしている」に対する返答

「ふーん。製品開発プロセス支援ってなに?」・・・11票

「なんかよくわかんないけどすごそうだね。」・・・・3票

「そんなことよりお雑煮冷めるよ」・・・・・・・・・1票

「コンビニ行くついでに年賀状出しといて」・・・・・1票

「ITってかっこいい!イケメン!抱いて!!」・・・・・0票


とりあえず、100%理解されていないことが分かりました。。。どうしよう。

ざっくりと言ってしまえば、製品開発プロセス支援というのは現在PLMと呼ばれています。

PLMとはProduct Lifecycle Management(製品ライフサイクル管理)のことですが、このPLMをどうやって分かりやすく説明してやろうか。。。それが問題です。


 例えば以下のようなサイトで丁寧な説明があります。


NEC eセミナー(企業の生き残りをかけて、製品を強くする!

http://www.nec.co.jp/esemi/plm/core/index.html


目に見えないものなので、魅力を伝えるのが苦労するところはありますね。なんとなく理解してもらおうとするとやはりこれくらいの文章量が必要でしょう。すごく分かりやすくて私は好きです。製品開発プロセス支援ってなに?とか言ってくる人全員にこのページを見ていただきたい。


ただ、親戚とかに話すにはちょっと長いですね。。。


そこで国内で販売されている主要なPLMパッケージソフトの紹介ページより、キャッチコピー的なものを引用してきました。

PLMをバシッと説明してくれてるものはあるんでしょうかね。。。調べてみました。


NEC : ObbligatoIII

http://jpn.nec.com/plm/

ObbligatoIIIは、製造業を取り巻く環境の変化に柔軟に対応しながら、これからのグローバルものづくりに求められる製品情報共有基盤を構築し、お客様のグローバル市場における成長をご支援します。

グローバルって二回言ってますね。大事なことですね。他のページを見ると国内トップシェア、といった宣伝文句もあり日本の製造業が海外展開していくことをかなり意識していますね。


PTC : PTC Windchill

http://ja.ptc.com/product/windchill

PTC Windchill には、製品ライフサイクルの全段階で製品を管理するための総合的な機能が用意されています。堅牢かつ高機能なアーキテクチャは、現代のグローバル環境に合わせて設計されています。

 製品関連のすべての情報を一元管理できる PTC Windchill を利用すれば、生産性、製品品質、製品パフォーマンスを高めることができます。

キーワードが自然な形で満遍なく含まれており、コンパクトにまとまっております。それゆえ抽象度が高いですが、もう少し細かく話しを聞いてみたいと思わせる感じがあります。


siemens : Teamcenter

http://www.plm.automation.siemens.com/ja_jp/products/teamcenter/

スマートな意思決定で、より良い製品を

Teamcenterは、ユーザーが生産性を最大化し、グローバル業務を合理化しながら、ますます複雑化する製品を市場に提供するのに役立ちます。

PLMの一つの側面である生産性の最大化というところに焦点を当てていますね。市場のグローバル化、エンドユーザーの価値観の多様化により製品バリエーションが爆発的に増えている現代において、生産性を上げる仕組みというのは非常に訴求力がありますね。


Dassault Systems : ENOVIA

http://www.3ds.com/ja/products-services/enovia/

最先端のコラボレーティブ・アプリケーションでビジネス・エクスペリエンスを管理します。

 3Dエクスペリエンス・プラットフォームを基盤としたENOVIAによって、イノベーターはコラボレーションによる真の恩恵を享受していただけます。

お、おう。。。こ、これまで感じたことのない読後感。。。

ページの画像とかもファンタジックな雰囲気で、言葉の感じと合ってるといえば合ってる気がします。


SAP : SAP PLM

http://www.sap.com/japan/solution/lob/r-and-d.html

SAP PLMで市場投入期間を短縮

SAPの製品ライフサイクル管理ソリューションで、製品の企画から廃棄までの取り組みを合理化しましょう。SAPには、効率の向上、意思決定の的確化、リスクの低減などの実現に役立つ充実したポートフォリオが揃っています。

ポートフォリオが充実しており、拡張性が高いことがイメージできるような表現ですね。世界最大級のソフトウェアベンダーSAPの持つ多種多様な製品群とPLMとの連携が期待できそうです。


Oracle : Agile PLM

http://www.oracle.com/jp/products/applications/agile/index.html

オラクルのAgile PLMソリューションは、今日の企業が抱えるもっとも複雑な課題の1つ、「収益性を確保しながらいかにしてイノベーションを進めるか」を解決します。製品ニーズが世界規模でますます複雑化するなか、従来のコラボレーション手法として用いられた、手作業を伴うシステムや特定の目的に特化したシステムだけでなく、Eメールでさえも過去のものとなりつつあります。製品の設計から開発、発売、アフターサービス、廃棄まで、その全ての側面をクラス最高の統合型モデルで最適化したいと考えるビジネスリーダーは、オラクルの豊富な専門知識と幅広いポートフォリオを活用し、積極的なコミュニティ活動の恩恵を受けることを選択しています。オラクルのAgile PLMは業界でもっとも包括的なエンタープライズPLMソリューションであり、製品バリューチェーン管理に欠かせない重要な要素となります。

製造業の現状から始まり、PLMの特徴、導入による効果まで一通り表現されています。統合、とか包括的、といった部分が特徴ですかね。部門をまたいだデータの一元管理というのがPLMの大きなポイントですから、データベースの王者Oracleが強調したいのはPLMの中でもデータの統合管理の部分なんでしょうね。「Eメールでさえも過去のものとなりつつあります。」とかキャッチーでいいですね。


Aras : Aras Innovator 10

http://www.aras.jp/solutions/

ArasのPLMソリューションは、製品開発、グローバルな製造、サプライチェーン業務、品質、コンプライアンスなどを含む製品ライフサイクル全体での幅広い戦略的ビジネス イニシアチブに対応しています。

戦略的ビジネスイニシアチブという表現が印象的ですね。PLMを導入する決定権を持っているのは現場の設計者ではなく、より上層部の方なので、ビジネスとしてどれだけメリットがあるかを明確に示す必要がありますし。ちょっと使ってみたいですね。戦略的ビジネスイニシアチブ。


。。。といった感じでございます。うーん。やはり表現が全体的に抽象的にならざるを得ないですね。親戚とかに話す場合は分かりやすい具体例などを添えるといいんでしょうかね。今度また考えてみます。

きっかけは大学時代の部活動でした。
なんとなく情報系の学科に入学し勉強する傍ら、人並みに遊んだりバイトに精を出していた大学時代。そんな中、大学から始めた美術部での活動が予想以上に面白く、気づけば他大学の学生と一緒に展覧会を企画するようになりました。


地方の大学ということもあってか展覧会はそれなりの認知度があり、地元の新聞記者の方やアーティストの方も観に来てくださいました。私は企画だけでなく作品も気合い入りまくりで出展していたのですが、皆さんの視線の先には他の学生の作品ばかり。。。
一瞬、劣等感を感じたものの、すぐに別の感情を発見しました。
 

なんだこれ、全然悔しくないな!


自分が作った展覧会という場でみんなが楽しんでくれた充実感で、私の悔しさは吹っ飛びました。このことに気付いたことで「新しいものが世に出る場を作る仕事」に興味を持つようになり、専攻だった情報系と合わせた就職先を考え始めたのでした。


自分の考えたものが世の中に出ていくことを想像するとワクワクしますが、実際に世に出るまでにはいろんな面倒事をクリアしなければなりません。アイデアの実現を妨げる面倒事を取っ払ったら、ものを作ることはもっと自由で楽しくなるはずです。その場作りに自分が携われたらワクワクできるだろうなと思い、今私は製造業の設計支援システムを作っています。採用面接ではもっと別な話とか偉そうなこととかいろいろ言ってた気がするけれど、元を辿るとホントにこんな些細なことがきっかけでした。もうすぐ働き始めて3年になりますが、製造業のスケールのデカさ、業務の複雑さに感動しながら日々奮闘しており、自分の考えが間違ってなかったと今でも思ってます。

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