近年の製造業は顧客のグローバル化、価値観の多様化によって、多品種少量生産というスタイルが求められています。設計業務を従来の擦り合わせ型からモジュール型に最適化させようとした場合に、業務の流れに大きな変更が発生します。それに伴って従来利用していたコンピュータシステムの使い勝手が悪くなり、新しい業務内容に合わせたシステムが望まれるようになり、我々SIerのところに依頼が来るわけです。その際にキーワードとなる「モジュール型製品」「設計のモジュール化」などという単語。よくわからなかったので人に聞いたり自分で調べたことをまとめてみました。
◆モジュール型製品とは?
製品の設計思想(アーキテクチャ)の一つ。製品を構成するモジュール(複数部品の組み合わせ)が他のモジュールから独立しており、モジュール間に固定されたインターフェース(他のモジュールとの連結部分)が存在する製品を指します。
例えばPCなどはモニター、マウス、キーボード、CPU、メモリ、ストレージなど様々なユニットにより構成されており、自分の好きな組み合わせにカスタマイズすることができる、モジュール型製品の典型例です。
もう少し細かい話をすると、モジュール間のインターフェースが一般に公開されている「オープン・モジュール型」と公開されていない「クローズド・モジュール型」という分類もあります。オープン・モジュール型は業界全体が統一規格を用いることで会社の枠を超えた分業構造が発生し、技術革新が促されます。Windowsを搭載したPCメーカーはこのオープン・モジュール型を取り入れ巨大化しました。クローズド・モジュール型は自社独自の規格を用いることで顧客の囲い込みに向いています。Appleなんかが得意なやり方ですね。
これらのモジュール型はカプセル型、レゴブロック型、水平分業型などと呼ばれることもあります。
◆モジュール型でない製品とは?
擦り合わせ型製品と呼ばれています。製品をモジュールに分けられない、またはモジュール間のインターフェースが製品によって異なる製品を指します。
例えばコンパクトデジカメなどのレンズ一体型カメラは、レンズと本体とにモジュール化された一眼レフカメラと違いモジュールに分割できない製品です。最近はハイエンドなコンパクトデジカメが登場し、一眼レフカメラと同等の性能を持っているものもあります。擦り合わせ設計により製品全体のパフォーマンスが最適化され、小型化、軽量化を実現することができました。
擦り合わせ型はインテグラル型、ジグソーパズル型、垂直統合型などと呼ばれることもあります。
◆製品をモジュール型にするメリットは?
1.モジュールごとの独立した、あるいは平行した製品開発が可能。
→製品(あるいは業界)全体の技術革新が促進されます。
→モジュールの進歩が製品の進歩に直結します。
→モジュールの進歩を事後的に利用できます。
→製品導入後であってもモジュールを追加して機能を拡張できます。
2.保守コストを削減可能。
→モジュールの修正が他のモジュールに干渉しません。
→製品全体のボトルネックをモジュールの変更だけで解消できます。
3.多種多様な製品を作ることが可能。
→顧客嗜好の多様化に対応でき、グローバル化による法規対応に強みを持ちます。
4.分業によるコストが低い。
→擦り合わせ型のように部品を組み合わせる際の密なやり取りが不要です。
◆デメリットは?
1.機能、性能で一定の冗長さがある
→必ずしもその製品に最適なインターフェースを使うわけではなく、全体のパフォーマンスが犠牲になることがあります。
2.構造変化のコストが大きい
→インターフェースを変更すると過去のモジュールが利用できなくなります。
→コスト増を避けるために時代遅れのインターフェースが使われ続ける場合があります。
3.膨大な組み合わせが存在する場合に高品質な製品設計が難しい
→擦り合わせ型と比較して動作が不安定なものが多いです。セキュリティ上の抜け穴ができてしまうことも。
→全てのパターンを網羅した完全なマニュアルが作れないこともあります。
→多数のモジュールを自ら組み合わせた場合、問い合わせ先が存在せず、自己責任になってしまいます。
だいたいこんなところでしょうか。今後、設計システムとしてのモジュール化、すなわちモジュラーデザインについてもまとめていきたいです。